【コラム】全国に拡がる「カキ不漁」──広島だけじゃない、海の異変と漁師の苦悩

以前のブログでも書いたとおり、今年2025年、広島県の牡蠣が不漁であるというニュースは多くの方の耳に届いたかと思います。
【News】広島カキ、異例の遅れと不漁――地球温暖化が“海の恵み”を脅かす?

しかし、問題は広島だけにとどまりません。

三重県、宮城県、岡山県など、全国の主要な養殖カキ産地でも同様の異変が起きており、背景には地球温暖化による海水温の上昇プランクトン不足、そして自然災害など、複合的な要因が絡んでいます。

【コラム】全国に拡がる「カキ不漁」──広島だけじゃない、海の異変と漁師の苦悩

養殖カキの歴史と変遷については、こちらの記事をご覧ください。
【コラム】養殖カキの歴史と変遷――広島から世界へ、海の恵みの物語

三重県──鳥羽・浦村かきの苦境

三重県鳥羽市の浦村地区は、全国有数のカキ養殖地として知られています。
例年であれば、秋から冬にかけて「浦村かき」の出荷が始まり、観光客も多く訪れます。
しかし今年は、身入りが悪く、小ぶりなカキが目立つ状況です。

「水揚げしても、殻を開けたら中身がスカスカなんです。こんなことは初めてです」 ──浦村の養殖業者

漁業者によりますと、夏場の海水温が高すぎたことで、カキが過剰に産卵し、体力を消耗
その後、プランクトンの発生が少なく、栄養不足に陥ったことで成育が遅れたそうです。

水揚げされたカキのうち、最大7割が死んでいたという報告もあり、現場は深刻な状況です。

対策として、成長が不十分なカキを再び海に戻して育て直す「再養殖」が行われていますが、出荷時期の遅れや収益減少は避けられない見込みです。
観光業への影響も懸念されており、地域経済全体に波及する可能性があります。

宮城県──津波と高水温の二重苦

東北地方のカキ養殖の中心地である宮城県も、今年は例年にない困難に直面しています。

2025年7月に発生した津波により、気仙沼市などの養殖筏が流失
被害額は約1.3億円にのぼり、養殖業者は設備の再建に追われています。

「海が荒れるのは覚悟してるけど、筏ごと流されたのはショックでした。再建には時間がかかります」 ──気仙沼の養殖業者

さらに、海水温の上昇によってカキの成育が遅れ、初出荷が10月以降にずれ込む見込みです。
養殖業者の中には、今後のリスク分散として、海水温に強い品種への転換や、真珠養殖への移行を模索する動きも出てきています。

岡山県──瀬戸内海の変化と養殖業の模索

岡山県もまた、瀬戸内海に面したカキ養殖地として知られていますが、今年は広島と同様に高水温の影響を受けています。
特に浅瀬での養殖では水温の変化が顕著で、カキの成育に大きな影響を与えています。

「昔は水温が安定してたけど、最近は夏の海が熱すぎる。深場に移すしかないかもしれません」 ──日生町の養殖業者

一部の養殖業者は、水温の安定する深場への移動や、育成期間の見直しを検討しています。
また、海洋環境の変化に対応するため、AIやIoTを活用した養殖管理の導入も始まりつつあります。

全国的な課題──温暖化と海の恵みの未来

これらの事例から見えてくるのは、単なる一時的な不漁ではなく、構造的な問題です。

地球温暖化による海水温の上昇は、カキ養殖だけでなく、他の水産業にも影響を及ぼしています。
特に夏場の猛暑が長引くことで、産卵過多・体力消耗・エサ不足といった複合的な影響が出ており、従来の養殖サイクルが通用しなくなってきているのです。

また、自然災害の頻発も養殖業の安定性を脅かしています
津波や台風による設備の損壊は、復旧に時間と費用がかかるだけでなく、出荷スケジュールにも大きな影響を与えます。

カキ養殖風景

消費者としてできること

不漁によって価格が高騰することもありますが、消費者としては「旬の味覚を守る」意識も重要です。

地元産のカキを選ぶ加工品や冷凍品を活用する産地の情報に関心を持つ──こうした行動が、養殖業者の支援につながります。

また、地域の漁協や生産者が発信する情報をチェックすることで、より正確な状況を知ることができます。

SNSやブログを通じて、消費者の声を届けることも、海の恵みを守る一歩になるでしょう。

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