【コラム】米スターバックス大量閉店の背景に迫る！──価値観変化とブランド再構築

2025年10月20日、Yahooニュースにて報じられた「米スターバックスの大量閉店と人員削減」のニュースは、世界中のスタバファンに衝撃を与えました。

かつて「第三の居場所（サードプレイス）」として愛されたスターバックスが、なぜ今、これほどの規模で店舗を閉じるに至ったのか。

実はこの発表は、2025年9月末にスターバックス本社が公式に発表した事業再編計画に基づくものであり、10月に入ってからその詳細が報道され始めたという流れです。

本ブログでは、スターバックスの大量閉店の実態と、その裏にある社会的・経済的な要因を掘り下げながら、今後のカフェ文化の行方について考察していきます。

■ 事業再編の概要：10億ドル規模の改革

スターバックスは2025年9月末、北米の店舗数を約1%削減し、米国とカナダで合計18,300店舗にする方針を発表しました。
これは約500店舗の閉鎖に相当します。
また、企業社員900人の削減も含まれており、総額10億ドル（約1487億円）の事業再編となります。

この再編は、単なるコスト削減ではなく、「Back to Starbucks」という再建計画の一環であり、2026年度以降の店舗拡大と1000店舗の改装を見据えた布石でもあります。

スターバックスの既存店売上高は6四半期連続で減少しており、株価も年初から8%下落。
S&P500種株価指数が13%上昇しているのとは対照的です。

この業績不振の原因としては以下が挙げられます：

スターバックスは創業以来、「家庭でも職場でもない第三の居場所（サードプレイス）」を提供することを理念としてきました。
しかし、近年はモバイルオーダーやピックアップ型店舗の増加により、滞在型の体験価値が低下していました。

今回の再編では、座席や電源コンセントの増設などを通じて、顧客の長時間滞在や来店頻度を促す方向へ舵を切っています。

削減対象となった900人は、主にノンリテール部門（本社や支援部門）の社員であり、現場のバリスタや店舗スタッフではありません。
これは、現場重視の経営資源再配分を意図したものであり、「緑のエプロン（店舗現場）パートナーへの投資」を強化する方針が示されています。

この動きは、顧客体験の質向上と店舗デザインの刷新を通じて、ブランド価値を再構築する狙いがあります。

一部の閉鎖店舗は、労働組合に加盟していた店舗であり、これが閉鎖の判断に影響したのではないかという憶測もあります。
ただし、スターバックス側は「労組加盟は閉鎖判断の要因ではない」と否定しています。

それでも、労働者の抗議活動や雇用喪失への懸念が社会問題化する可能性もあり、ブランドイメージへの影響は避けられません。

興味深いのは、日本のスターバックスが絶好調である点です。
2025年現在、日本では店舗数が2,000店を超え、売上・利益ともに過去最高を更新しています。

その理由は：

日本ではスタバが「ちょっとした贅沢」として支持され続けており、非日常的な体験価値が強く根付いています。

今回の大量閉店は、単なる経営不振ではなく、消費者の価値観の変化に企業が対応できなかった結果とも言えます。

こうした価値観の分岐が、スターバックスのようなブランドにとっては岐路となります。

今後のスターバックスが復活するためには、単なるコスト削減ではなく、顧客とのつながりを再構築する体験設計が求められるでしょう。

米国スターバックスの大量閉店は、ブランドの再定義を迫る出来事です。

価格、スピード、空間、体験――消費者が何を求めているのかを見極め、「また行きたい」と思わせる理由を再構築できるかが、今後の鍵となります。

日本のスターバックスが示すように、地域ごとの価値観に寄り添う柔軟な戦略こそが、グローバルブランドの生き残りに必要なのかもしれません。