2025年10月、国土交通省は外国人による大規模な土地取得に対し、国籍の届け出を義務化する方針を発表しました。
外国人の土地取得、国籍の届け出を義務に 大規模取引の実態把握急ぐ – 日本経済新聞
対象は山林などで1万平方メートル以上の取引。
自治体が取得者の国籍情報を把握し、国に集約する仕組みを2026年度に整備するとのことです。

この制度改正は、単なる事務手続きの強化ではなく、地域ごとの実態と安全保障・環境保全の課題に対応するものです。
現状の整理とともに少し深堀をしていきたいと思います!!
🗾 どの地域で外国人の土地取得が多いのか?
以下は、近年外国資本による土地取得が目立つ地域とその背景です:
地域 | 主な取得目的 | 懸念・論点 |
---|---|---|
北海道(道東・道北) | 水資源・森林・観光開発 | 水源地の保全、安全保障(国境近接) |
長野・山梨・群馬 | 別荘地・リゾート開発 | 山林の乱開発、地元住民との摩擦 |
沖縄・奄美・小笠原諸島 | 観光・投資 | 国境離島の安全保障、土地放置リスク |
福岡・佐世保・長崎 | 港湾・軍事施設周辺 | 自衛隊基地近接地の取得事例あり |
東京・大阪・京都 | 都市部の不動産投資 | 利用目的の不透明化、法人名義の実質支配 |
🧠 特に北海道では、中国資本による水源地周辺の森林取得が報告されており、国境離島では安全保障上の懸念が強まっています【出典:NEWS DAILY】。

📜 制度の仕組みと位置づけ
今回の届け出義務は、既存の制度とどう違うのでしょうか?
以下に整理します:
制度名 | 対象 | 目的 | 国籍情報の扱い |
---|---|---|---|
国土利用計画法 | 全国の大規模取引 | 土地利用の適正化 | 国籍記載なし |
重要土地等調査法 | 安保上重要な区域 | 利用状況の監視・規制 | 特定区域で事前届出あり |
今回の新制度 | 山林1万㎡以上など | 実態把握・環境保全 | 国籍の届け出を義務化(自治体→国) |
✅ ポイント:取引を禁止するものではなく、「誰が買っているか」を把握するための制度です。
🌐 国際比較:日本は規制が緩すぎる?
主要国の制度と比較すると、日本の規制はかなり緩やかです。
国名 | 外国人の土地取得 | 制限内容 |
---|---|---|
CN 中国 | 不可 | 借地のみ許可 |
KR 韓国 | 軍事施設周辺など取得制限区域あり | |
CA カナダ | 住宅購入を一時禁止(2023年〜) | |
AU 豪州 | 中古住宅取得は禁止、新築は審査制 | |
US 米国 | 州によって農地取得を禁止 | |
JP 日本 | 原則自由 | 一部区域で事後調査型の規制のみ |
📌 日本は「憲法による財産権の保障」や「国際条約による内外無差別原則」により、規制が難しい構造にあります。
🧩 制度のジレンマと今後の論点
私の視点で整理すると、以下のような制度的パラドックスが浮かび上がります:
- 安全保障や環境保全のためには規制が必要だが、国際条約や経済界の反発が壁になる
- 国籍を届け出させることで実態把握は進むが、取得そのものは依然として自由
- 法人名義や株主変更による“実質的外国支配”は制度上見えづらい
💬 こうした制度の隙間を埋めるには、「実質支配者の開示義務」や「相互主義(その国で日本人が買えないなら日本でも制限)」などの議論が必要です。
✍️ まとめ:土地は誰のものか?
今回の制度改正は、「土地は誰が持つべきか?」という根源的な問いを私たちに投げかけています。
国籍による差別を避けつつ、公共の利益や安全保障を守るためには、透明性と制度的整合性が不可欠です。
私見としては、地域別の実態と制度の論理を照らし合わせながら、今後の政策議論を冷静に見極めていきたいところです。
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