―1929年の教訓は、2025年の私たちに何を語るのか―
本日、2025年10月24日は「暗黒の木曜日(Black Thursday)」から96年目にあたります。
1929年10月24日、ニューヨーク証券取引所で起きた株価の急落は、世界恐慌の引き金となり、経済史に深く刻まれました。
この出来事は、単なる市場の暴落ではなく、人々の過剰な期待と信用の膨張がもたらした“構造的な崩壊”だったと私は考えています。
本ブログでは、暗黒の木曜日の背景と影響を振り返りながら、現代の投資環境との共通点、そして私たちが学ぶべき教訓について掘り下げていきます。

繁栄の20年代と投機熱の高まり
1920年代のアメリカは「狂騒の20年代(Roaring Twenties)」と呼ばれる経済成長期でした。
自動車、ラジオ、冷蔵庫などの新技術が生活を一変させ、株式市場は庶民にも開かれた“夢の舞台”となっていきます。
特に「ブローカーズ・ローン」と呼ばれる信用取引が流行し、手持ち資金の10倍まで投資できる仕組みが個人投資家の熱狂を加速させました。
株価は上がり続けるという幻想が広がり、企業の実態以上に株価が膨らんでいったのです。
しかし、1929年10月24日午前、売り注文が殺到。
ティッカー(株価表示機)が遅延するほどの混乱の中で株価は急落。
銀行団の買い支えも一時的な効果しかなく、数日後の「暗黒の火曜日(Black Tuesday)」にはさらに大きな下落が続きました。

暗黒の木曜日がもたらしたもの
この暴落は、単なる株価の調整ではありませんでした。
企業倒産、銀行破綻、失業率の急上昇など、実体経済への影響が連鎖的に広がり、世界的な大恐慌へと発展します。
アメリカでは失業率が25%を超え、ドイツやイギリス、日本などにも波及。
日本では昭和恐慌が起き、農村部の困窮や都市部の失業が深刻化しました。
このように、金融市場の崩壊が社会全体を揺るがす力を持つことを、暗黒の木曜日は私たちに突きつけたのです。
現代の投資環境との共通点
あくまで私見ですが、現在の投資環境にも「暗黒の木曜日」と似た構造が潜んでいると感じます。
① SNSによる情報拡散と群集心理
1929年は新聞やラジオでしたが、今はX(旧Twitter)やYouTube、TikTokなどが投資判断に影響を与えています。
情報の速さはメリットですが、過剰な熱狂や“バズ”による群集心理がリスクを高める要因にもなっています。
② レバレッジ取引の普及
信用取引、CFD、仮想通貨のレバレッジなど、個人でも高リスクな取引が可能になっています。
1929年の「ブローカーズ・ローン」と本質的には同じで、利益も損失も増幅される構造です。
③ “永遠の上昇”という幻想
米国株やインデックス投資が長期的に右肩上がりであるという信仰は、1920年代の「永遠の繁栄」と重なります。
もちろん、過去の実績は重要ですが、未来を保証するものではありません。
過信は危機の種になり得ます。
投資家としての冷静さを保つために
暗黒の木曜日は、「市場は感情で動くが、価値は冷静に見極めるべき」という教訓を残しています。
私自身、投資においては以下の点を意識すべきだと考えています:
- 情報の出どころを精査すること(誰が、何の目的で発信しているか)
- レバレッジをかけすぎないこと(資産の範囲内での運用)
- 「みんなが買っているから」という理由で買わないこと(群集心理に流されない)
- 暴落時こそ、資産の本質的価値を見直すこと(企業の収益性、社会的意義など)
また、“損をしないこと”よりも、“冷静に判断する力を持つこと”が、長期的な投資成功につながると私は信じています。
歴史は繰り返すのではなく、韻を踏む
米国の作家マーク・トウェインは「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」と言いました。
暗黒の木曜日は、まさにその“韻”を現代に響かせています。
市場は常に熱狂と恐怖の間を揺れ動きます。
だからこそ、私たちは歴史を学び、感情に流されず、価値を見極める力を養う必要があるのです。
2025年の今日、私たちは1929年の教訓をどう活かすべきか。
それは、「投資とは、未来への信頼と冷静な判断の積み重ねである」という原点に立ち返ることだと、私は思います。



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